雨
雨がしとしと降っています
おかげで厳しい残暑も、今日は少し落ちついています
空は一面の雲に覆われているので、お日様はどこにも見られません
私の心の空模様もちょうどこんな感じです
数えきれないほどの雨粒が空から降ってきます
空から降り、ものすごい勢いで地面に叩きつけられます
もし雨粒に痛みを感じる神経があったらと思うと、ぞっとします
無数の雨粒が、激痛によってショックの悲鳴をあげることでしょうから
雨粒たちによる悲痛のコーラス、とでもいいましょうか
不思議と、今の私にはそれが聴こえてくるかのようです
両の耳が金切声の雨あられで、つんざかれそうです
雨の時はどうも気分がひどく落ちこんでしまいます
心の中に洪水が起こって、私の心ごと沈んでしまうみたいです
いけませんね、今は頑張りどきだというのに
どうして人の心はこうも天候に左右されてしまうのでしょうか?
いっそのこと、心なんてものは捨ててしまえたらいいのに
私は常々、機械になれたらいいと思ってしまいます
機械のように、無心で規定された通りのことをてきぱきとこなしたいのです
こんなことを言うと、あなたはこうおっしゃるかもしれませんね
──人だってある意味で機械だよ、なぜなら人だって物質でできているのだから
──心だってつまるところ機械さ、ただその規定された働き方が複雑にできているだけだ、と
さすが、賢くいらっしゃいますね、あなたは
お大学を出ているだけはあります
もし、本当にあなたのおっしゃる通り、人も機械なのだとしたら
どうして人の心には、こんなにも数多くの負の感情が備わってしまっているのでしょうか?
好きと嫌い、だけが備わっていれば良かったのではないでしょうか?
そうすれば、世の中はもっと単純でわかりやすくなっていたでしょうに
雨がしとしと降っています
私は雨が嫌いです
ですが、時折はぼうっと雨を眺めているのも好きです
私の心の汚れが、きれいに洗い流されていくような感じがしますから
あれ? 何だか好きと嫌いの感情だけになったとしても、心はそう単純ではありませんね
好きでもあり、嫌いでもある、なぜどちらか一方に定まらないのでしょうか?
人の心も空模様とおんなじですね
複雑で、予測しにくく、時に激しく、時に穏やか
そして今日の雨のように、時にしっとりと濡れてしまいます