黙夫の詩の菜園 言葉の収穫

自作詩を載せるブログ TikTokで朗読もやってます

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最果ての街の住人たち

星になることを夢見るホクロ専門の医者
今日も聴診器片手に時のかじる音を聴く


50年先の予定まで綿密に立てる廃駅の駅長
今日もやってこない列車を待ち続ける


人生に意味などないと口癖のように言う老いぼれの庭師
今日も目に見えぬ幻覚の植木を手入れする


一日経つと記憶がリセットされる風景画家
今日も昨日と全く同じ絵を描き始める


問いを立てることにしか関心のない大学教授
今日も新たな問いを探す研究に明け暮れる


誰も参加しない競技で闘い続ける孤独なアスリート
今日も己の限界だけに挑戦する


パン以外の食べ物は皆大好きパン職人
今日もつまらなそうにパンを焼く


出入口のない建物の中でお店を開く暇な雑貨屋店主
今日も花瓶の中の水から水を分離して暇を潰している


予算を編成することしか仕事のないこの街のベテラン町長
今日も重箱の隅をつつくような予算の使い道を議論する