黙夫の詩の菜園 言葉の収穫

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幸せと不幸せ

幸せは見えにくいけど
不幸せはよく目立つ


幸せは漠然としているが
不幸せはひどくあからさま


幸せはいつもそばにいるけど
あまり気づきにくい


不幸せは不意にやってきては
全てをかき乱してく


いつも当たり前にあったものが
突然奪われると、人は不幸せを感じる


その時になってようやく
幸せはすぐそこにあったんだと気づく


幸せは風船
常にふわふわとただよっている


それがいつの日かいきなり破裂して
耳をつんざくかもしれない


だから
当たり前にある幸せに感謝しよう


当たり前じゃない不幸せにいきどおるよりも
当たり前にある幸せに感謝しよう


不幸せにばかり目を向けるのではなく
漂う幸せを感じ取ろう


数少ない不幸せの重しと
数えたら意外とたくさんある幸せの粒


きっと天秤にかけたら
幸せの方に傾くと思うんだよ


人の魂は幸せなだけだと
ふわふわと天まで飛んでいってしまう


だからある程度不幸せの重しをつけて
魂を地にとどめておくんだよ


それは生きている証
どうか不幸せに押し潰されませんように

駄目人間讃歌

導かれるまま
流されるまま
風に吹かれて
舞い落ちるさま


そんな生き様
おひとり様
ぼくのわがまま
気の向くまま


石につまず
地面にひれ伏し
目先の利益に
無我に飛びつき


とこに突っ
無意味に気づき
涙のさかずき
ほおより流れし


闇にまぎれて
難を逃れて
罪悪感から
芯がねじれて


性格ゆがんで
死んだ目をして
過去の栄華に
みじめにすがって


そんな人生
とんだ運命
いつも反省
うつむく姿勢


七回転んで八回起きても
なんにも学ばずまたコケる
馬に念仏、豚には真珠
猫に小判で、ぼくに愛


いつか出世
ゆめみて発声
いくぜ木星
なんかダセー


そんな日々でも
日はまた昇る
こんなぼくでも
空気は吸える


そうさぼくは
駄目な人間
だけどぼくは
茶目な中年


人生なんてそんなもの
運命なんて飾り物
つまずいたっていいじゃない
それが人間なんだもの

メメント・モリ

地球があと何回周ったら
おれは死ぬのだろうか?


時計の針があと何周回ったら
おれは死ぬのだろうか?


心臓の鼓動があと何回鳴ったら
おれは死ぬのだろうか?


あと何本髪の毛が抜けたら
おれは死ぬのだろうか?


おれは死ぬまでにあと何回
ご飯が食べられるのだろうか?


おれは死ぬまでにあと何回
言葉を発するのだろうか?


おれは死ぬまでにあと何回
笑えるのだろうか?


おれは死ぬまでにあと何回
夢を見るのだろうか?


死ぬまでにおれはあと何歩歩くのだろうか?


死ぬまでにおれはあと何度まばたきをするのだろうか?


死ぬまでにおれはあと何本の映画を観るだろうか?


死ぬまでにおれはあと何人の人を愛するだろうか?


無限に残されているようでも
実は残り回数は決まっている


シャンプーとか歯磨き粉みたいに
毎日少しずつしか消費していなくても
いつか使い切ってしまう


死もそれと同じかな
いつか使い切ってしまう…

全然、ぜんせ

釈然としない君の憮然ぶぜんとした態度に
当然、僕は唖然とする
それは偶然だと君は整然と言うが
依然として僕は必然を疑う
だから君は毅然きぜんと居直り
超然として断然、僕に非があることを
平然と責め立てる
慄然りつぜんする僕をよそに
忽然こつぜんと君は飛び出してしまった
突然の出来事にしばらく呆然となり
やがて愕然がくぜん悄然しょうぜん渾然こんぜんとなって
心が雑然と騒然とする
漠然とした不安に鬱然うつぜんとなりながらも
このままではいけないと決然し
未然に決裂を防ぐために
敢然かんぜんと僕は部屋を飛び出す
燦然さんぜんと輝く太陽は泰然たいぜんと構え
悠然ゆうぜんなる自然の有り様を
粛然と僕に見せつける
君は果然、そこにいた
判然としない僕の表情に
俄然がぜん、君はまた憤然とする
だから僕は純然たる愛を君に告げた
全然、ぜんせから僕は──

いのちの狂乱

人間は欠陥だ
動物は無謀だ
生物は迷走だ
生命は狂乱だ


いのちを燃やして他者を破壊し
他者をらって結局死す
無意味無意味、あまりに無意味だ
存在そのものがあまりに無意味だ


繁殖の果てに何がある?
行き着く先は‘終わりなき闘争エンドレス・ファイト
争うために増殖し
死ぬためにまたさらに産む


たったひとつの星の薄皮うわべ
のべつまく無い死の消費
死死死死、死死死死、死の連鎖
吐き気をもよおす数珠つなぎ


進化が何だ!
そんな詭弁きべんで正当化すな!
ダーウィンの頭をかち割って
二重らせんを引きちぎろう


数多あまたの淘汰でしに濾されて
残ったものは、ちっぽけな芸術
膨大ないのちの濫用らんようの果てに
手に入れたのは、美の上澄うわずみ?


そんなものを得るためだけに
いく千万もの生命の歴史が
幾億年もの星の歴史が
費やされたというのだろうか


なれば芸術はその重みに耐えねばならぬ
宇宙を無駄にしてはならぬ
狂乱的な命の虐殺を
浄化せるに足る光を放て


それが欠陥存在に課せられし使命……