黙夫の詩の菜園 言葉の収穫

自作詩を載せるブログ TikTokで朗読もやってます

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虚無

駄目人間讃歌

導かれるまま 流されるまま 風に吹かれて 舞い落ちる様(さま) そんな生き様 おひとり様 ぼくのわがまま 気の向くまま 石に躓(つまず)き 地面にひれ伏し 目先の利益に 無我に飛びつき 床(とこ)に突っ伏(ぷ)し 無意味に気づき 涙の杯(さかずき) 頬(…

全然、ぜんせ

釈然としない君の憮然(ぶぜん)とした態度に 当然、僕は唖然とする それは偶然だと君は整然と言うが 依然として僕は必然を疑う だから君は毅然(きぜん)と居直り 超然として断然、僕に非があることを 平然と責め立てる 慄然(りつぜん)する僕をよそに 忽…

いのちの狂乱

人間は欠陥だ 動物は無謀だ 生物は迷走だ 生命は狂乱だ いのちを燃やして他者を破壊し 他者を喰(く)らって結局死す 無意味無意味、あまりに無意味だ 存在そのものがあまりに無意味だ 繁殖の果てに何がある? 行き着く先は‘終わりなき闘争(エンドレス・フ…

森の中

暗き森の陰気なさざめき 獣の咆哮(ほうこう)、闇を突く 瘴気(しょうき)に当てられ、小鳥は咽(むせ)び 野花(のばな)は影でほくそ笑む 月光に映(は)えるは、放浪の魂 泣訴(きゅうそ)の鼻声、不協和に沈む 凶逆(きょうぎゃく)の眼光、周囲を哨戒…

ぼくの箱庭

あなたの存在がぼくを苦しめる あなたの振る舞いがぼくを惑わせる ぼくの箱庭は平穏そのものだった 柔らかい芝生に小川のせせらぎ やさしい木陰に小鳥のさえずり ぼくはそれで十分だった 穏やかな自然に囲まれて 慎(つつ)ましく生きていればそれでよかった…

列車

列車が走る ビルを縫(ぬ)って、田畑をかき分け どこまでもどこまでも…… 川を越え、丘を穿(うが)ち 越境して宙(そら)を横断する 線路は果てしない 幾(いく)千もの駅を経て もはや人の乗り降りもなくなり それでも列車はひた走る 幾万もの無人駅を各駅…

労働

この世で最も罪深い存在は何だ? ──人類だ 人類の犯した最も重い罪は何だ? ──愛を知ったことだ 最も重い罪に対する最も重い罰は何だ? ──労働だ 左様。ゆめ忘れるなかれ 働くことは罪滅ぼしであることを 労働は人類への懲罰(ちょうばつ) 喚(わめ)こうが…

人間毒

僕の中には毒がある 僕の毒には味がある 苦味と酸味と憎しみと 苦悩と怨嗟(えんさ)の味がする 君の中にも毒がある 君の毒には闇がある 嫉妬にまみれた悪臭と 腐った失意の香(かおり)がする 彼の中にも毒がある 彼の毒には魔が宿る 誹謗中傷罵詈雑言(ば…

朝食

窓の外の景色を眺めながら 今日も僕はパンを食べる 枯れ葉の落ちきった木々が枝を広げ 寒空の下に佇(たたず)んでいる 何か皆で万歳をしているみたい 乾いた青空の中をわた雲が 行く宛(あて)もなく静かに流れていく 僕の人生と同じように おかげで地球が…

毒を吐くキミ

どうしてキミはそんなに毒を吐くのか 毒を撒(ま)き散らすのをやめたまえ キミの毒によって皆が苦しむ 環境が汚染され、腐敗が進む 環境はキミだけのものではない 大勢の者が共有する公共財だ それを汚染すればどうなるのか キミにはわからないのだろうか …

必然

抜けていく こぼれていく 掴(つか)み取っても 掴み取っても 隙間から 端(はし)から 滴(したた)り 垂れ落ちていく 布をかぶせても 囲いで覆(おお)っても 切れ目から 抜け穴から 漏れ 溢(あふ)れていく 密閉しようが 封印しようが 狭間(はざま)か…

君の白は僕の黒

君の白は僕の黒であり 君の愛は僕の憎しみである 君の笑顔は僕の涙であり 君の誠実は僕の不実である 君の子宮は僕の魂であり 君の正解は僕の間違いである ねぇ君、わかるでしょう? そういうことなんだよ 君は僕の皮膚を見て 僕は君の臓腑(ぞうふ)を見る …

希求の旅

一粒の光の宝玉(ほうぎょく)を求めて 果てしない荒野を彷徨(さまよ)う 手がかりは、あの太陽 陽の沈む方に向かって ひたすらに歩く 《あの丘》を越えた先にきっとある…… 一滴の幸福の雫(しずく)を求めて 茫洋(ぼうよう)とした海を渡る 手がかりは、…

逃走

時刻が迫(せま)る それはおれの背中をナイフで ひと突きにしてやろうと 常に狙っていやがる いつもおれの背後を付け回り おれを殺そうと企んでいる しかしそいつの姿を 見たことはない みえないナイフをぎらつかせながら 明白な殺意をもって おれを狙い続…

コンクリートと梅干し

こんなところまで来るんじゃなかった 虚空の失望にふきさら(・・・・)されて 憧れだけをよすが(・・・)にするから いけないのだ 何もかもをかなぐり(・・・・)捨てて あるべき場所を飛び出したのに たどり着いたのは ぼくとつ(・・・・)とした無意味…

あの10月

風に弄(もてあそ)ばされて 落ち葉がひらひら舞う 10月はもう過ぎ去ったから あの(・・)10月はもう過ぎ去ったから 時間を戻す術(すべ)はないのか 落ち葉が落ちずに済むように… あの(・・)10月を取り戻すために… 残念ながら 過去は存在しない 宇宙は終…

私が機械であったなら

私が機械であったなら 私は何も感じずに済むのに 辛い思いをせずに済むのに 痛い思いをせずに済むのに 私の頭が機械であったなら 過ちを犯すこともないのに 瞬時に物事を理解出来るのに スイッチを切るだけで眠れるのに 私の肉体が機械であったなら 腹が減る…

銀色の種

ひび割れた荒野の 死んだ大地の上に 銀色の種を蒔(ま)く しあわせが育つように 川もなく森もなく 雨も降らないこの病んだ大地に 銀色の種を蒔く きぼうが芽生(めば)えるように 雨はなくとも涙がある 涙で大地を濡(そぼ)つかせれば 銀色の種は育つだろ…

神骸戦争

天地のひっくり返る夜 生きとし生けるものは死に 黄泉(よみ)の国が独立を果たす 怨念、無念が天に撒(ま)かれ 神々と骸骨の戦争が始まる 光は影として、影は光として 魂は地へと埋め込まれ 体液の雨が降り注ぐ 墓地は要塞と化し 骨の軍楽(ぐんがく)が鳴…

去り行く

月日は過ぎ去って行(ゆ)きました… 木陰(こかげ)の隙間から覗(のぞ)かせる日光の あの暖かい微笑(ほほえ)みは 過ぎ去って行きました… 一面に広がる麦畑を揺らす あの漣(さざなみ)のような優しいそよ風は 過ぎ去って行きました… 忙(せわ)しない雑…

針の穴

真っ白な碧(あお)い壁に 突端のへし曲がった鈍色(にびいろ)の針を 突き刺す そこには小さな、矮小(わいしょう)な、極微な、些細な 穴が開(ひら)く 針の穴 その穴を薄ぼんやりと見つめていると 秒の紡(つむ)ぐ作業工程を感じる ふと思い立ち その針…

おれの辞書

おれの言葉は通じない おれの緑は肌の色 おれの鼻はカッターナイフ おれの土は北極星 おれの愛は無関心 おれは母国語を介さない だからだろうか おれの言葉は届かない おれの喜びも おれの悲しみも おれの叫びは 虚空を切って 亡霊となって 這(は)いまわる…

危機的状況

コンクリートの茨(いばら)の下で 石でできたパンを食べる 小さな文字でびっしりと埋められた 手紙を読んで深いため息を吐(つ)く ラジオが発するノイズ バタバタと猛(たけ)り狂う文鳥 染みだらけの窓から差す陽の光 それらは別にいい それらは別に危険…

僕は空っぽ

僕は空(から)っぽ 頭が空っぽ 覚えたことはすぐに忘れる 何か意見を言ったとしても 中身が空っぽとよく言われる 僕は空っぽ 心が空っぽ 感じることは何もない 本も映画もアニメもゲームも 僕の心を満たさない 僕は空っぽ 胃の中も空っぽ 腹は減るけど冷蔵…

虫になりたい

虫になりたい 虫のように 小さな命でありたい ちっぽけな存在でありたい 儚い生涯でありたい 虫のように 飛ぶ羽根が欲しい ちょこまか動く足が欲しい 考えない矮小(わいしょう)な脳が欲しい 虫のように すぐ踏み潰されたり 他の動物に捕食されたり 殺虫剤…

最果ての街の住人たち

星になることを夢見るホクロ専門の医者 今日も聴診器片手に時の齧(かじ)る音を聴く 50年先の予定まで綿密に立てる廃駅の駅長 今日もやってこない列車を待ち続ける 人生に意味などないと口癖のように言う老いぼれの庭師 今日も目に見えぬ幻覚の植木を手入れ…

《ソレ》の侵食

私の中に取りついた《ソレ》 捉えどころのない《ソレ》は 私の中に住み着き 私の内部をゆっくりと侵食し 言い知れぬ不安を私にもたらす 私は《ソレ》を追い出したいが 《ソレ》が何なのか分からず どのように追い出せばいいのか 皆目(かいもく)見当もつか…

そんなものはない

流星の煌(きら)めく満天の星空 そんなものはない 星は流れてなどいない 永遠に誓った愛 そんなものはない 愛は長続きなどしない 天使のような微笑み そんなものはない 天使は微笑んだりしない 君との運命の出会い そんなものはない 運命は偶然のいち解釈に…

正常な世界

眠りとともに夢から覚めて 太陽が東から沈み西へと昇る影のあるところに光が出来て 鳥が地面を優雅に泳ぐ──何もおかしくはない おかしいのは私の存在だけ子どもから親が産まれ 空から草花が萌え出(い)ずる水が溶けて氷となり 密室の中に風が吹き抜ける──何…

ネガティブな時は

幸せなら手をたたこう 幸せでないならケツ叩こう 悲しいなら肘(ひじ)伸ばそう 落ち込んだら脇なでよう 憂うつなら鼻ほじろう 苦しいなら毛を毟(むし)ろう 恐いのなら腿(もも)上げよう 辛いのなら膝(ひざ)曲げよう 気持ちわるいならヘソを掻(か)こ…