黙夫の詩の菜園 言葉の収穫

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針の穴

真っ白なあおい壁に
突端のへし曲がった鈍色にびいろの針を


突き刺す


そこには小さな、矮小わいしょうな、極微な、些細な
穴がひら


針の穴


その穴を薄ぼんやりと見つめていると
秒のつむぐ作業工程を感じる


ふと思い立ち


その針の穴に
時の羽を敷き詰めてみる


羽軸うじくをそっと


穴の中に通していくと
すぽんと羽が吸い込まれていく


何か気持ちいい


夢中になって羽を何枚も何枚も
壁に穿うがたれた


.(ピリオド)


に向かって注いでいく
なんだか点の密度が濃くなっていくようで


そこから何か


異世界への扉がひらくような、
そんな気がしてくる


何枚も何枚も


羽を針の穴に通しているうちに
だんだんと上手くなってきて


1枚1秒で


穴に入れることができるようになる
最初は気持ちよかったのに、もはやそれ自身が


秒の作業工程


と化してしまって
興醒めしてしまう


でもやめられない


針の穴が羽を要求するし
羽はまだ2兆枚くらい残っている


1枚1秒で


入れたとして、あと2兆秒も
この作業が続くのだろうか


ところで


2兆秒とはどのくらいの時間なのか
しかし、考える暇はない


とにかく羽を穴に通すのだ!