黙夫の詩の菜園 言葉の収穫

自作詩を載せるブログ TikTokで朗読もやってます

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沈思

幸せと不幸せ

幸せは見えにくいけど 不幸せはよく目立つ 幸せは漠然としているが 不幸せはひどくあからさま 幸せはいつもそばにいるけど あまり気づきにくい 不幸せは不意にやってきては 全てをかき乱してく いつも当たり前にあったものが 突然奪われると、人は不幸せを感…

存在と“境”

存在すること それは“境”があるということ テーブルがあって、イスがある コップがあり、コーヒーが入っている 部屋がある 私がいる 窓があり、窓の外には緑がある それらは皆、“境”によって区切られている テーブルとイスが区別される コップとコーヒーが区…

意味の万華鏡

意味が押し寄せる 過剰な意味が荒波となって ボクの脳みそに打ち寄せる 意味に意味が重なって 意味の地層ができあがる 地層は固まって定義となる しかし意味の横溢(おういつ)は止まらない 解釈の防波堤は決壊を起こし 挙(あ)げ句(く)は無意味が意味を…

たわし犬

犬が話しかけてきた それは黄金の毛皮をまとっていた …というのは嘘だ それは小汚い、たわしのような短い毛の犬だった 首輪もリードもついていないその犬は さびれた公園の、砂場の傍(かたわ)らで 人生への失望と、世の中への憤怒を 滾(たぎ)らせたよう…

世界平和

世界から 苦しみや悲しみが なくなってしまえばいい 不安も不幸もない世界 あらゆる負の要素を除去した世界 影のない世界 影のない世界は光のない世界だ 人々は何の痛苦(つうく)も知らない 何の悲しみも喪失も知らない 比較するものがないから 何が希望な…

物語戒厳令

物語を引き裂こう ‘終わり’に支配されないために 筋(すじ)を切り、展開を爆破せよ 起承を転結 させてなるものか 時間軸を引き抜くべし 過去から未来への輸送路は閉鎖する! 心理はかく複雑であれ 都合よく恋に落ちるな 運命という戯言(ざれごと)は発禁と…

原語

湧(わ)き立つ風の中に その声はまぎれる ア…ア… 鼓膜は 聴こえないふりをする ア… ア… 大地から立ちのぼる 音(ne)のつぶやき エ… 頭には 見えていない エ… ア… 鼓動が それを感じる ウ… U── 星の 呼びかけ 創世(そうせい)の またたき …ウ! 見えぬ 聴…

鶏か卵か

夢か現(うつつ)か正気の沙汰か 意識の旅はつれづれなる 生きているのか死んでいるのか その問題はさておくにしても 存在するのかしないのか 沽券(こけん)に関わる大案件 意味か無意味か意味深長か 終日(ひねもす)頭を悩ませる 始まりの終わりか終わり…

転がる

坂を下って 転がるボールは 柱にぶつかり 跳ねかえる 蹴っ飛ばされた 路傍(ろぼう)の小石は ころころ転がり 静止する 路傍の石には 意思はあるのか 一心不乱に 考える ヒトは考え 思考は巡る 巡る思考は 頭を転がす 転がる頭 ぐるぐる回る 脳が乱され ゲロ…

右か左か

右か左か どちらの道を進むべきかわからないって? そんな時は、迷わず右を選べばいいのさ なんせ、右は英語でright(正しい)なのだから なんだって? もしそれで右が正しくなかったらどうするかって? そんな心配はしなくていいさ なんせ右はrightなのだか…

僕は落ちる

僕は落ちる 恋に落ちたのか? 崖から落ちたのか? 受験に落ちたのか? 信用が落ちたのか? それは定かでない ともかく、何かの拍子に僕は落ちたのである 僕は落ちる そして僕は落武者だ しかし刀は持たぬ 刀は人を傷つけるからだ そこまで僕は落ちぶれていな…

とある三流哲学者の思索

1+1が2であることの脅威 猿も木から落ちることへの失望 太陽が東から昇ることへの懐疑 あらゆる物体が原子からなるという安堵 無を創造することへの憧憬 彼女ができないことへの焦燥 否定の否定が肯定であることへの不満 砂浜の砂粒を数え上げるがごとき恍…

時間の王国

はじまりがあって、終わりがくる 過去は流れ去り、未来が押し寄せる 誕生したものは、やがて死ぬ 時間の王国 時が支配する領域 すべてが終わりに向かっていく世界 そんな世界に生きる僕らは、時間の奴隷だ 大空に放たれた矢は、どこまでも飛んでいくことはで…