犬が話しかけてきた
それは黄金の毛皮をまとっていた
…というのは嘘だ
それは小汚い、たわしのような短い毛の犬だった
首輪もリードもついていないその犬は
さびれた公園の、砂場の
人生への失望と、世の中への憤怒を
わうわうと
私は彼の隣に座り
「わかるよ」と一言
犬は私の腕を噛んだ
私は一瞬どきっとした
彼は見抜いていたのだ──
私は犬に対して非礼を
私は何もわかってなどいなかった
彼の方が私よりも
それから私は犬に教えを
犬は私に
「なるほど」
カラスの一群が飛んでいった
陽が沈む方とは逆の方に向かって
真一
私はそろそろと腰を上げ
犬に対して
公園を後にした
犬の目の中に見ていたもの──
それは私自身であった