黙夫の詩の菜園 言葉の収穫

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逃走

時刻がせま
それはおれの背中をナイフで
ひと突きにしてやろうと
常に狙っていやがる
いつもおれの背後を付け回り
おれを殺そうと企んでいる
しかしそいつの姿を
見たことはない
みえないナイフをぎらつかせながら
明白な殺意をもって
おれを狙い続けている
だからおれは
そいつから逃げねばならない
逃げて逃げて逃げ続けなければならない
片時も休まることはない
眠っている間も
心は常に逃げ続けている
逃げることをやめることはできない
おれはまだ死にたくはないからだ
だけど生き続ける限り
奴は迫ってくる
おれが何をしたっていうんだ…
おれに罪はないんだぞ!
罪があるのは奴の方だ
そいつの原罪のせいでおれは
いや、おれだけでなく
罪なき大勢の人々が
命を狙われることになったのだ
いつの日か──
いつの日かおれは
そいつを逆に殺してやろうと思う
だけどいまは無理だ
いまのおれには
というか、いまの文明レベルでは
そいつに太刀打ちできない
だからいまはひたすらに
逃げ続けるしかない
逃げて逃げて逃げて…
逃げ続けるのだ
‘その時’が来るまで──