はじまりがあって、終わりがくる
過去は流れ去り、未来が押し寄せる
誕生したものは、やがて死ぬ
時間の王国
時が支配する領域
すべてが終わりに向かっていく世界
そんな世界に生きる僕らは、時間の奴隷だ
大空に放たれた矢は、どこまでも飛んでいくことはできない
この国の法がそれを許さぬ
放たれた矢の勢いは、王の権力に奪われて地に落ちる
放物線を描いて──
起点と終点の
止めどなく押し寄せる放物線の嵐
体は錆び、心は朽ちていく
少しずつ、少しずつ──
だから僕は脱出した
時間の圧政に耐えられなかった
国境の警備員に引き留められたが、それでもこの国を出た
「やめておけ」と言った警備員の目は、訴えていた
その目は深淵をたたえていた
あの時、僕はその目をもっと見つめていればよかったんだ…
後悔先に立たず──
しかし、もはやそんな表現は無意味だ
後悔は先に立っていた可能性を突きつけられたのだ
放物線はもうどこにもない
解放されたはずなのに、なぜか切ない
王国の外に広がる円の中を、僕は彷徨う
過去や未来は消え失せて、無限の《今》が無限に広がる
始まりは終わりであって、終わりが始まる
それとも始まりが始まって、終わりが終わったのだろうか?
生も死も無くなった
誕生することは死ぬことであって、死ぬことは生まれることである
僕は今生きているのか、死んでいるのか、それもわからない
どこからともなく矢が飛んできては、無限の彼方へ消えていく
それは地に落ちることなく、どこまでも飛んでいっては、またやって来る
ここにはそれを止める法は何もないのだ
円環の
時の法の届かぬ場所で、僕は無限の《今》を漂う
戻りたくてももう戻れない、故郷の国を思いながら…
あんなに嫌だった《終わり》を恋焦がれながら…