黙夫の詩の菜園 言葉の収穫

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あの僕

人生は選択の連続
であるからには日々は
何かを選び
代わりに何かを諦め
諦めた方の先に何があったのか
それは“この僕”には
知るよしもなく
僕はまた今日の選択をして
分岐点で“僕”が分裂する
“この僕”が選ばなかった道は
“あの僕”が行き
“あの僕”は“この僕”と
永遠にそこで別れ
それぞれの人生を歩んでく
“あの僕”はあの後どうなったのか
“あの僕”は今ごろ何をしているのか
分岐した世界は交わることなく
どこまでも無限に枝分かれし
そうして無数の“僕”が分裂して
無数の“僕”の人生が生じる
しかし僕は“この僕”でしかなく
“あの僕”ではあり得ない
無数の僕の中の“どれかの僕”は
きっと何かで成功して
充実した人生を送っていることだろう
だけどもそれは“あの僕”の人生であって
“この僕”の人生ではない
みじめな日々に辟易へきえきする“この僕”とは
入れ替えることはできないのだ
同じ“僕”なのに……
だから僕は“僕”に向けて手紙を書く
届かぬ愚痴をしたためて
“この僕”の後悔を知らせるために──
人生は選択の連続
であるからには日々は
選択を迫られ
今日も僕は分裂する