黙夫の詩の菜園 言葉の収穫

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マッド・テオロジスト

普段
折りたたみ傘を持っているのに
持っていない時に限って
不意に雨が降ってきたりするよね
そして雨でずぶ濡れになって
くそっ
今日は何てついてないんだと
怒りが込み上げてきたりするよね
でもね
僕は違うよ
そんな時僕は
狂喜乱舞するんだ
なぜならそんな時こそ
神の存在を確信することができるのだからね
だってそうだろう?
どうして
傘を持っていない時に限って
雨が降ったりするんだい?
それは明らかに
偶然なんかじゃなく
この世界が神によって
造られているからなんだ
神がわざと
雨を降らせているからなんだ
だから僕は
突然の雨に降られた時は
おおはしゃぎして
ずぶ濡れのまま
外を駆け回るんだ
そして天を仰ぎ
神のその崇高な御業みわざ
涙を流しながら
感謝するのさ
つくづく
この世界は
神の意図で満たされていることを
実感することができるよ
たとえば
僕がブサイクな見た目に
生まれてきたこともそうさ
そのせいで
異性にモテることもないし
何かと他人からは
キモがられるよ
電車で
若い女性の隣に座れば
即座にその女性は
立ち去ってしまうし
会社の同僚の女性たちも
他の男性社員には
普通に接するくせに
僕に接する時だけ
妙に冷たいんだ
でもいいんだ
そんな瞬間こそ
神の存在をリアルに
感じられる時なのだから
明らかに
これは神が仕組んだことだ
神がそのように意図したからこそ
僕はそんな目にあっているんだ
僕が貧乏な家庭に生まれたのも
頭の出来が悪いのも
恋人はおろか
友達さえできないことも
給料が低いことも
最近肩が凝ることも
スマホ落として画面が割れたのも
散歩中の犬にやたらと吠えられたのも
マンガの同じ巻数のやつを
間違えて2冊買っちゃったのも
さっき階段でつまずいたのも
全部
神の御業なのさ
何ひとつとして
偶然なんてものはない
不幸は
偶然なんかじゃない
それは
神が与えたもうたものなのだ
この世に不幸があることが
神の存在を証明している
だってそうだろう?
もし
神が存在しないのだとすれば
世界は何もかもが
満ち足りたものに
なっているはずなのだから
しかし
現実には
そうなっていない
つまり
神は存在する
ということなのだ
なんということだ
僕は
神の存在を証明してしまった
この僕の人生
そのものが
神の存在を立証しているのだ
おお
なんという 法悦 エクスタシー
この喜びは
どんな金額を払っても
買えぬものだ
だからこそ
あえて言おう
ああ
なんと
素晴らしきかな
我が人生
神よ
人知を超えた
その 高邁 こうまいなる計らいに
感謝します