月の光が僕を
夜は危険だ
僕を
日没は僕を置き去りにする
さっきまでの僕は何だ?
昨日までの僕は誰だ?
自分の存在が嘘になる
過去の自分が他人に変わり
他人の自分が“僕”になる
記憶の“僕”は不確かで
何かの本で読んだことか
何かの映像で観たことか
それとも実際の体験なのか
その境が曖昧だ
──物語の登場人物
自分がまるでそうみたい
ポカンと空いた自己意識
他人の記憶で
つぎはぎだらけの“僕”の存在
月の光が不安にさせる
夜の
僕の仮面を
僕の中の黒い衝動
皮を
それは悪魔か、怪物か
存在が実存に取って代わる
本当の僕は何者か
理想の自分とRealの自分
だが理想とは誰の理想か?
周囲の期待の集積か?
真に自分が望む“自分”を
求めることは罪なのか?
だがもし、“怪物”になることが
自分の望み…だとしたら?
──破滅と成就の二律背反
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
“僕”を奪うのは誰なのか?
“僕”を引き裂くのは何なのか?
仮面の僕が“僕”なのか?
怪物の僕が“僕”なのか?
どんな証拠を持ってこようと
どんな推論、重ねようと
“僕”の存在は証明できない
ただ暖かい陽の光だけが
確かな生を実感させる
月の光が僕を切り裂く
吐き気が内から込み上げる
自分の実感、ないことが
気持ち悪い