黙夫の詩の菜園 言葉の収穫

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私が機械であったなら

私が機械であったなら
私は何も感じずに済むのに
辛い思いをせずに済むのに
痛い思いをせずに済むのに


私の頭が機械であったなら
過ちを犯すこともないのに
瞬時に物事を理解出来るのに
スイッチを切るだけで眠れるのに


私の肉体が機械であったなら
腹が減ることもないのに
暑さ寒さに耐えられるのに
殴られようが蹴られようが平気なのに


機械のように私に心がなければ
人からののしられようが
非難されようが
無視されようが
苛立いらだつことも
凹むことも
憂鬱ゆううつになることもないのに


なのに…
なのになぜ


私は人間であるのか?
なぜ機械ではないのか?
なぜ心が備わっているのか?
なぜ血が流れているのか?
なぜ瞬時に計算出来ないのか?
なぜ記憶メモリ曖昧あいまいなのか?
なぜ言われた通り出来ないのか?
なぜ憂鬱にさいなまれるのか?


なぜ人間?
なぜ《私》?
なぜ生命?
なぜ非機械?
何ゆえ私は《私》なのか?
《私》は何なんだ?
なぜに自己意識に縛られる?
どうして情動が湧き起こる?


もうやめてくれ!
これ以上の《私》はもうやめてくれ!
心を消し去ってくれ!
血液を抜いてくれ!
電気につないでくれ!
助けてくれ、マザーボードよ!


もう…
もうよしてくれ
終わりにしてくれ
意識のシャットダウンをしてくれ
魂のコンセントを引き抜いてくれ


私を…
ロボットに…
生まれ変わらせてくれ…