黙夫の詩の菜園 言葉の収穫

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自分

極寒の南極にひしめくペンギンの群れ
サバンナを行軍するヌーやシマウマの群れ
季節ごとに移動するチドリの群れ


それぞれの生物種にそれぞれ固有の生き方がある
遺伝子に刻みつけられた宿命
何者もその宿命から逃れることはできない


ペンギンはシマウマのようには生きられないし
シマウマはチドリのようには生きられないし
チドリはペンギンのようには生きられない


ヒトもまたその宿命に囚われた存在
ヒトはヒト以外の何者にもなることはできない
大自然から課せられた宿命を背負って生きていくしかない


自分という存在
このかけがえのない自分という存在は
しかし、たいした存在ではない


ヌーの群れやシマウマの群れの中の一頭と同じように
自分は
ヒトという種の群れの中の一頭に過ぎない


ヌーが一斉いっせいに群れで移動するように
自分も
ヒトという種の群れで行動する中の一個体に過ぎない


それは大自然を生きる動物達と何ら変わらない
種としての存在が大したものなのであって
どんな個体も大した存在ではない


そんなふうに大自然の動物達に想いをせた時
このちっぽけな自分という存在の悩みなど
大したものではないと思えてくる


数多あまたのペンギンの群れを観察すれば
その内の特定の一体が何を考えているかなど
気にも留めないだろう


自分という存在が
いかに何かを考え、いかに何かに悩んでいたとしても
大自然にとってはひどくどうでもいいことなのだ


だからいつまでもうじうじしてても仕方がない
ペンギンが生きている
シマウマが生きている


ヌーが生きている
チドリが生きている
それと同じこと


ヒトが生きている
自分が生きている
ただ、それだけのこと


この大自然の中に生きている、本当に粗末な存在の内のひとつ
自分はただそれだけの存在
大したものではない